特集 アディクション支援のフロントライン
ODでも覚醒剤や大麻でも,社会のウラ側で尊重されること―ハームリダクション実践のはじまり・いま・これから
ことう ごろう
1
1ハームリダクション東京
pp.107-113
発行日 2025年6月5日
Published Date 2025/6/5
DOI https://doi.org/10.69291/pt51070107
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2024年冬。ポーランド・ワルシャワ
ハームリダクション東京共同代表の上岡陽江と私はポーランドに赴いた。ワルシャワで開催される欧州ハームリダクション学会に当事者の仲間と4人で参加するためだ。
私たちの定義する当事者は,「薬物依存症者」「アディクト」「薬物乱用者」のどれでもない。「薬物を使用することがある人(People who use drugs)」だ。この当事者は薬物を使ってどんなにめちゃくちゃになったか,どうやってそこから回復したかというエピソードを語らない。でも,例えばどうやって薬物を少しでも安全に使っているか・使ってきたかなら語れる。そうやって仲間の命を救っているのだけれど,そんな当事者が公的な場にでることは,今の日本では危なすぎる。海外に行かなければ孤立してしまう。
だからみんな自費で参加した。それでも,ワルシャワに行きたかった。日本では表に出るのが危険な当事者が,そこでは主体になる。奪われた尊厳を取り戻す運動の中心にいるのだ。欧州の仲間との出会いや再会に喜び,それぞれの活動を讃え励ましあえることが嬉しかった。ハームリダクションの集まりはいつもハートウォーミングなのだ。
いまハームリダクションを実践できるのは,こうして海外で活動する仲間とともに学び,連帯しているからだ。

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