- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
Ian R.H. Falloon教授による統合型地域精神科治療プログラム(OTP ; Optimal Treatment Project)(Falloon & Fadden, 1993)に基づき,平成14年に「ささがわプロジェクト」(佐久間,2004)という大規模な地域移行のプロジェクトを実践した。プロジェクト実現のため地域での生活支援と就労支援を行うNPO法人アイ・キャンを設立し,デイナイトケアや訪問看護ステーションを整備した。当初94名の退院者に始まり,その後も病院からの地域移行を行い,統合的な地域支援を展開している。OTPは本人の意志の実現に向けて,本人と家族もチームの一員として支援を展開するものである。
この「地域支援包括チーム」に端を発し,地域の中核病院として救急から早期退院を目指す精神科の「急性期包括チーム」,病院,クリニックのリワーク,カウンセリングセンター,EAP(Employee Assistance Program)で連携する「ストレスケア包括チーム」,児童思春期病棟,専門外来と専門のデイケア,そして関連法人の療育支援と連携する「児童思春期包括チーム」,認知症や高齢者の医療介護支援が連携する「老年期包括チーム」の5つの専門領域でグループが包括的に連携する体制を構築している。さらに,東日本大震災後には,グループ全体で医療・介護・保健・福祉の枠を超えて“誰もが幸せに共に生きる地域づくり”を目指す「地域共生包括チーム」を地域に展開している。
ここでは地域支援包括チームと地域共生包括チームの活動を紹介し,疾病や障害を抱えた人々の自己実現や幸せのための支援や,それを可能にする地域のあり方について考えたい。

Copyright© 2025 Kongo Shuppan All rights reserved.