特集 地球温暖化対策—2020年以降の新たな国際枠組み
低炭素社会の実現に向けた取り組み
増井 利彦
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1国立研究開発法人国立環境研究所 社会環境システム研究センター 統合環境経済研究室
pp.988-994
発行日 2017年12月15日
Published Date 2017/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208794
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パリ協定と2℃目標
1.パリ協定とその概要
2015年にパリで開催された気候変動枠組条約(United Nations Framework Convention on Climate Change:UNFCCC)の第21回締約国会議(COP21. COP:conference of the parties)においてパリ協定は採択された1).翌2016年の10月にはパリ協定が発効する条件〔55カ国以上が批准し,それらの国々からの温室効果ガス(greenhouse gas:GHG)排出量が世界全体の55%を超える〕を満たしたことから,当初の見通しよりも早く2016年11月4日に同協定は発効した.わが国は発効後の2016年11月8日に批准した.
パリ協定では,長期目標として,第2条において「世界の平均気温上昇を,産業革命前と比較して2℃よりも十分に低い水準に抑える」ことを目標とした,いわゆる「2℃目標」や,気温上昇を1.5℃に抑える努力を追求することが明記されている.また,こうした目標を達成するために,第4条において世界のGHG排出量をできるだけ早くピークアウト(頭打ち)させ,21世紀後半には人為起源のGHG排出量を正味ゼロにする(人為起源の排出量と吸収減による除去量をバランスさせる)としている.各国は,COP21の前に提出した各国の約束草案(GHG排出削減目標)について,目標達成のための緩和(GHG排出削減)措置を実施するとともに,5年ごとに前の期よりも進展させた削減目標を示し2020年までに低炭素排出長期戦略を策定することが示されている.
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