特集 はたらく人たちのウェルビーイング―‘はたらき方’というよりも,‘企業風土’の改革を
精神障害者を取り巻くスティグマと人権モデル,就労,合理的配慮
吉井 初美
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1東北大学大学院医学系研究科精神看護学分野
pp.34-39
発行日 2025年2月5日
Published Date 2025/2/5
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はじめに
我が国における5大疾患(精神疾患,糖尿病,悪性新生物,心疾患,脳血管疾患)の患者数は,精神疾患が615万人と最も多く,決して珍しい疾患ではない。だが,筆者が指導する看護学生から「精神障害者と接したことがない」と頻繁に聞くのは何故だろう。精神障害の有無が見た目からは気づきにくいこともある。しかし,精神障害者に対して過去に行われた隔離政策の影響が考えられないか。すなわち,戦後,精神障害者が国策として隔絶の対象になり,「恥意識」によって身内に精神障害者がいることが隠されたことと相まって,障害を公表しにくい社会風潮が現代にも引き継がれ,精神障害者はたくさんいるはずなのだが,看護学生が言うように「接したことがない」ということになるのではないだろうか。
本稿は,精神障害者と健常者の間を仲介する立場にあるだろう読者とともに,精神障害者を取り巻くスティグマと人権モデル,就労,合理的配慮について考えたい。
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