特集 勉強の心理学
少年院で勉強する――勉強で更新される生存戦略
松永 哲司
1
1東京西少年鑑別所
pp.314-319
発行日 2026年5月10日
Published Date 2026/5/10
DOI https://doi.org/10.69291/cp26030314
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I はじめに
「少年院での勉強」と聞いて,多くの人は何を思い浮かべるのだろう。
おそらく,規律の取れた行動訓練,出院後の社会復帰を下支えする職業指導,再非行防止のための各種教育プログラムといった,TVで報道されているものではないかと想像するが,TV離れが叫ばれて久しいし,私たちの業界が世間的にどこまで知られているのか,実のところよくわからない。自分の感覚を頼りにしようにも,私にとっての心理臨床の場は学生時からずっと非行・犯罪の領域で,大学院では精神鑑定や犯罪被害者支援の心理相談室が主な学びの場だったし,就職後は20年超,法務省の心理技官として少年鑑別所・少年院・刑務所で勤務してきた。おそらく世間一般とは異なる私の相場観をどこまで当てにしてよいものか,はなはだ心許ない。特集テーマが「勉強の心理学」であることも踏まえ,学びの端緒である疑問を大切にしてみようと思った次第である。
とはいえ,私のような現場職員にまでカウンターインテリジェンスの注意喚起が来るような秘密と機密に包まれた業界なので,あまり知られてはいないだろう塀の中での勉強事情について紹介したい。
なお,文中で示した事例については,趣旨を損なわない範囲で内容を加工していること,本稿はあくまで私論であることをあらかじめお断りしておく。

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