特集 勉強の心理学
親が子どもに勉強を返すまで
澁木 尚子
1
1白金高輪カウンセリングルーム
pp.308-313
発行日 2026年5月10日
Published Date 2026/5/10
DOI https://doi.org/10.69291/cp26030308
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I はじめに
「うちの子,勉強ができないんです。どうしたら勉強するようになりますか?」―
子どもが「勉強ができない」状態に陥ると,親は強い不安にとりつかれる。その不安は,関わる支援者,そして子ども自身をものみこんでいき,生活のすべてが「勉強」という強力な磁場に引き寄せられていく。このとき,親子や周囲の大人たちは,勉強を「させる」側と勉強を「しない」側に二分されたパワーゲームに閉じ込められてしまいやすい。そこにあるのは巨大な袋小路であり,多くの場合,その中で子どもが勉強に向かえるようになることは難しい。
本稿では,子どもが「勉強ができない」状態について,それがなぜ生じるのかを考えたい。そしてそれを通じて,そもそも勉強とはどのような営みなのかを問い直したい。
こうした問いは,「どうすれば勉強ができるようになるか」という実際的な解決を考えると,遠回りに見えるかもしれない。しかし,勉強とは何か,とりわけ親にとっての勉強とは何かを問うことは,子どもが勉強「する」ようになることと深く関わっている。大人たちがこの問いを持つことは,「勉強ができない」状態にある親子,あるいはその支援者の視野を広げ,結果として,子どもが再び勉強に向かう可能性をひらいていくだろう。

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