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インターネットの情報量は半端ではなく医学情報も例外ではないが,情報源により内容は玉石混交なので情報の受け手の能力が問われるのは言うまでもない.そして近年,書籍の豊富さも自分が卒業した20年以上前とは較べものにならない.学生の頃に触れる医学書の代表は「教科書」で,おもしろいというものではなかったが書かれていることを疑うこともなかった.卒業後なぜか生化学の大学院に入って,教科書といえどもその内容は1つ1つの原著論文(一種危うさがある)の積み重ねであるということに気付かされた.つまり,いくつかの原著論文(木)からある種の定理のようなものを見出して物語にするのが総説(森)であるとすれば,それをまとめたのが教科書で,そういう重みのある本でさえ決して信じ切ってよいものではないかもしれない,と気付いたことが唯一の(?)収穫だったかもしれない.
中規模市中病院での勤務が長かったので褥瘡に興味を持つようになり入会した日本褥瘡学会は,設立当初から宮地先生をはじめ皮膚科医も関わっていらっしゃるが,会員構成は看護師が最多で形成外科医の存在感が大きく,薬剤師などもいて,以前は各職種が各業界の意見を主張しあっていた(?)ユニークな学会である.それはさておき,この世界でも多くの書籍が出版されている.褥瘡は原因がはっきりしているので予防・治療がメインとなるが,異なる治療法を正しく比較・評価するということは,個々の症例にさまざまな条件の違いがあり困難を極める.にもかかわらずラップ療法をはじめ,エキスパートオピニオン(?)の本も多い.ラップ療法はネットの力が大きかったと思うが,創傷治療の基礎知識をもたない人(医師を含む)の間で一時期「なんでもラップ」状態になり問題も生じたのは事実で,褥瘡医療の危うさを露呈した.豊富な書籍は大変役立つが,書籍からの情報収集にも受け手の能力が問われる時代かもしれない.
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