- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
I はじめに
ここ数年,学校・教育関係者から「不安の問題を抱える子どもが増加しているように感じる」という声をよく耳にするようになった。不安は誰もが日常的に経験する感情であるが,過度な不安は友人関係や学業成績などに負の影響をもたらし,学校適応が難しくなるなど日常生活に支障をきたす(Rapee et al., 2003)とされる。子どもの不安の問題は放置すると慢性化しやすく(Costello et al., 2003),成人期の問題へと発展する可能性も高い(Pollard et al., 2023)ことから,早い段階で予防のための取り組みを行うことが重要である。
精神疾患の予防アプローチは大きく分けて,ハイリスク者や兆候のある者を対象とするターゲットタイプと,全員を対象にするユニバーサルタイプとがある。筆者は,不安の問題の予防はユニバーサルタイプが望ましいのではないかと考えている。なぜなら,不安の問題の予防に関するCBTの基礎知識は,特定の子どものみならず全ての人にとって役に立つと考えられるからである。これは本特集のテーマである「みんなのCBT」にも通じる発想である。誕生から中年期までに約8割の人が何らかの精神疾患を経験する(Schaefer et al., 2017)とされる現代社会においては,誰もがメンタルヘルスの問題の当事者(または当事者を支える側)になる可能性がある。また,通常学級には不安や悩みを抱えながらギリギリのところで学校生活を送る子どもが一定数存在している。不登校の児童生徒数も年々増加するなか,CBTの基礎知識を誰もが早い段階で学習し,安心して過ごせる環境を皆でつくっていこうとすることが,非常に重要と考えられる。
以上により筆者は,通常学級で行うCBTベースの不安予防教育プログラム「勇者の旅」(以下,「勇者の旅」)を開発し(Urao et al., 2016),約10年にわたり実践と研究を行ってきた。本稿では,プログラム開発の経緯や「勇者の旅」の特徴,授業実践の実際などについて紹介し,これまでの取り組みの成果や期待される効果についても概説したい。

Copyright© 2026 Kongo Shuppan All rights reserved.

