シネマ解題 映画は楽しい考える糧[102]
「地獄に堕ちた勇者ども」
浅井 篤
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1東北大学大学院医学系研究科社会医学講座医療倫理学分野
pp.1171
発行日 2015年12月15日
Published Date 2015/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429200426
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最終回は,巨匠ヴィスコンティの世界へ!
最終回は,巨匠ヴィスコンティ監督の157分の現代史絵巻.原題は「永久に地獄に落とされた者」「呪われた者」「地獄の亡者」,などの意味です.しばしば絢爛,耽美,倒錯,退廃などと形容される作品ですが,親族間の権力争い,ナチスの悪とその“美しさ”,家族の愛憎,企業と国家権力などが描かれ,実に多面的な見方ができる作品に仕上がっています.
医療とも生命倫理とも,ほとんど関連する場面はありません.ただ何よりも,読者のみなさんがこのような作品を観る時間的余裕と,一連のヴィスコンティ作品を楽しむ心のゆとりをもてることを願ってやみません.疲れていたり時間が気になっていたりイライラしていては,過剰・遠大・鮮やかなヴィスコンティの世界にはとても入っていけないでしょう.とにかく時間をつくって観てください.倫理は人と人との間のルールです.そして,本作はまさに,人間を家族関係・社会との関係のなかで描いており,この意味で「最終回」にふさわしいと思います.
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