特集 村瀬嘉代子1935-2025
声なき声に五感を研ぎ澄ませて
西牧 陽子
1
1大正大学臨床心理学部臨床心理学科
pp.158-162
発行日 2025年9月10日
Published Date 2025/9/10
DOI https://doi.org/10.69291/cp25080158
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
I はじめに
心理臨床に携わる皆様にとっても,人一倍歩みの遅いゼミ生である筆者にとっても,物事の本質を見失わない視点から,いま歩む道は支援の対象にとってどうであるかと絶えず問いかけてくださる,羅針盤のような存在を失った事実は大きい。これまで上梓された多数のご著書に記された村瀬先生のお考え,講演や研修の場で語られたこと,受け取る相手の器に合わせて,緩急をつけながら直接お話しくださったこと,これらはいままで村瀬先生と関わりのあったすべての方のなかに,間違いなく息づいていることだろう。だからこそ,村瀬先生と直接対話することは叶わなくなったいま,その現実を嘆き,村瀬先生との関わりで得たものを大切な思い出として個人の内側に仕舞い込むのではなく,同じ時間をご一緒した共通の財産として共有させていただく今企画の目的と意義は,より一層重く感じられる。筆者自身もいまだ咀嚼の途上で,読者の皆様にわかりやすくお届けするには心許ないが,それでも村瀬先生から学ばせていただいたことを,できる限り言葉にしてみよう。

Copyright© 2025 Kongo Shuppan All rights reserved.