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QOL(Quality of Life:生活の質)は,身体的・精神的・社会的な幸福度を含む要素を総合的に評価する概念であるが,QOLと心理療法の間には非常に重要な関連があることは言うまでもない。心理療法を通じて,うつや不安などの症状が軽減されること,自己理解や自己受容が促進されること,対人関係が改善することなどは,QOLの向上に有益であるし,それを目指すことが心理療法というものであろう。また,心理療法によって自己実現や成長を支援することは,長期的なウェルビーイングにも寄与することもできよう。
筆者の主要な臨床的関心は,セクシュアリティにあり,セクシュアル・マイノリティや,性・恋愛・パートナーシップの指向/志向性においてマイノリティの人たちにフレンドリーな立場で臨床活動や社会的支援活動を行っている。1999年に採択された“性の権利宣言”でも「セクシュアリティは,喜びとウェルビーイング(良好な状態・安寧・福祉)の源であり,全体的な充足感と満足感に寄与されるものである」と謳われているように,筆者の立場からも,セクシュアリティのテーマとQOLやウェルビーイングの関係の深さは日々感じるところである。
セクシュアリティは多面的な構成要素をもち,代表的なものに個人の認識に深く関わるジェンダーアイデンティティ(gender identity:性同一性)や,個人がそのアイデンティティをファッションや仕草や話し方で表すジェンダー表現(gender expression:性表現)がある。本稿では,それらジェンダーにまつわるマイノリティの人々に対する心理療法について,筆者が運営する私設カウンセリングルームにて経験している複数の事例から構成した架空事例をベースに,実際の関わりについて紹介したい。

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