連載 ジェンダーの視点から地域・生活を考える・8
ネパールの村落開発とジェンダー
田中 由美子
1
1国際協力事業団国際協力専門
pp.666-669
発行日 1996年8月10日
Published Date 1996/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901404
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私は,1994年9月から現在まで,ネパールのポカラという西部地域にある人口約10万人の都市に住んでいる。国際協力事業団(JICA)が実施している「ネパール村落開発・森林保全計画」というプロジェクトで,「開発と女性」分野の専門家として働いている。このプロジェクトは,山間地域において貧しい村々の生活の向上を図りながら,森林保全を進めていこうとする試みとして始められたものである1)。
仕事の関係から近隣の山村を訪問することが多いが,村の生活や開発活動を支えている元気な女性たちによく会う。しかし,ネパールはカースト社会2)であり,どのカーストに生まれたかにより,そして男に生まれたか女に生まれたかによって,人生のほとんどの側面が規制されてしまう。高位カーストほど清浄であり,低位カーストは不浄であると考えられている。低位カーストは,高位カーストと婚姻や一緒に食事をすることなどはできない。また,女性はさまざまな点で不浄と考えられている。したがって,低位カーストで女性に生まれた者は社会的に最下位にいる。ただし,高位カースト内における女性差別にも厳しいものがある。
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