特集 学派論――公認心理師時代に学派を再考する
なぜ人間性心理学なのか?
金子 周平
1
1九州大学大学院人間環境学研究院
pp.686-690
発行日 2025年11月10日
Published Date 2025/11/10
DOI https://doi.org/10.69291/cp25060686
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I はじめに
私はやはり人間性心理学がいい。そう思う。学派に固執することで視野が狭まってしまうリスクはあるかもしれないが,私は個人としても専門家としてもこの立場でいること以外には考えられないし,むしろ進んでこの学派でいたいと思う。理論的立場をもって人に関わることで,その理解が目の前の人を一方向的に歪めたり,部分を切り取ったりしてしまう加害性も持ちうるかもしれない。しかし私にはこの学派であることが必然なのだから,学派の副作用を意識して振り返りながら,反省的に進んでいくより他ない。
「なぜ人間性心理学なのか?」を熱くパーソナルに書くことが私に与えられた課題だ。それに取り組むためには,私がこの人間性心理学という複雑な立場をどのように見ているのか,そしてこの学派のブレることのない「根っこ」を何だと考えているかを開示せねばならない。このことを素直に書くと人間性心理学に対する私の思い違いや偏った見方を露呈してしまうかもしれないし,まだ人間性心理学をあまりよく知らない人たちを混乱させてしまうかもしれない。だから,これは決して人間性心理学の一般論ではなく,「私のパーソナルな人間性心理学」論であることを,くれぐれも断っておきたい。

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