教育のひろば
教育の人間性
桑原 作次
1
1埼玉大学教育学部
pp.5
発行日 1967年11月1日
Published Date 1967/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663908881
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明治百年ということがこのごろの流行語となっているが,明治百年を強調することは,維新以来今日まで日本は隆々として発展の一路をたどってきたような印象をあたえ,22年前の敗戦の如きもちょっとしたミスぐらいにしか考えないように国民をみちびくのには役立つであろう。すなわち,百年百年とさわいでいると,それこそ百年どころか,建国以来最大のぎせいをはらってえた貴重な歴史的教訓をすっかり見失ってしまうことにもなる惧れがある。
明治5年の「学制」によって近代化のスタートをきった日本の教育が今日までおどろくべき発展をしてきたことはほこるに値いする。しかし,われわれはそれを直線的な発展としてとらえるのでなく,戦後の民主化による歴史的転換の意義を忘れてはならない。その中心的な思想は教育における人間性の確立にあるということができよう。戦前の教育が明治以来「国家性」を軸として展開されてきたとすれば,戦後の改革の根本的課題は「人間性」の確立にあった。
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