特集 第17回看護研究学会
誌上セミナー
医療における人間性の回復
松田 道雄
pp.23-31
発行日 1969年2月1日
Published Date 1969/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914366
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看護婦と人間性
昔から,看護婦というものは「白衣の天使」である,聖なる仕事である,という理論があります。神様にささげた尊い職業だから,そういう仕事に携わるということだけで名誉なんだ,その名誉のためには人間的な欲なんか顧みる必要なんかないという説であります。
私は,看護婦は聖なる職てあるという説には賛成しないんです。それは,その説は看護婦である人の人間性を無視しているからであります。これは人間を人間と思わない人,人間の基本的人権を全く無視した人の思想であります。安い月給で働かせる,労働時間も長い,深夜勤務もある,交代要員がないから休養も十分とれない。そして寮の設備も悪い,いまごろは寒い,部屋も狭い,食べものもおいしくない。そういうところで働かされている人が,これは少しひど過ぎるじゃないかというときに,一番いい撃退法は,その仕事は神聖な仕事ですよ,人間の欲は捨てなさいという説が,撃退するには一番都合がいい。
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