細菌性肺炎の治療（医療・介護関連肺炎）

概念・定義

　わが国の高齢化は急速に進行しており，65歳以上の高齢者の割合は2025年には30％，2060年には40％に達すると推察されている．高齢になるにつれて肺炎の発症，重症化のリスクは高くなり，適切な治療や予防法が求められる．日本呼吸器学会の成人肺炎診療ガイドラインによると，肺炎は主に発症環境によって市中肺炎community-acquired pneumonia（CAP），医療・介護関連肺炎nursing and healthcare-associated pneumonia（NHCAP），院内肺炎hospital-acquired pneumonia（HAP）に分類される．特にNHCAPは①高齢者施設の入所者，②90日以内に病院を退院した症例，③介護を必要とする高齢者，身体障害者，④通院にて継続的に血管内治療（透析，抗菌薬，化学療法，免疫抑制薬などによる治療）を受けている人に発症する肺炎であり，CAPと比較して高齢で基礎疾患を有し，ADLが低下した症例が多い．脳血管障害などの基礎疾患を有している症例では，誤嚥が関与していることが多い．報告によっても様々であるが，原因微生物はCAPよりも耐性菌の頻度が高いとされ，予後はCAPよりも不良である．終末期としての肺炎も含まれるため，個人の意思やQOLを考慮した治療決定のために，臨床現場では患者背景のアドバンス・ケア・プランニング（ACP）の議論の過程が重要である^1）．