今月の主題 呼吸器と免疫・アレルギー
免疫からみた呼吸器感染症
細菌性肺炎
松瀬 健
1
,
木田 厚瑞
1
1東京都老人医療センター・呼吸器科
pp.1126-1130
発行日 1986年7月10日
Published Date 1986/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220429
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肺の感染防御機構
肺は外界に開放した臓器であり,しかもきわめて血管に豊んだ構築を示している.呼吸運動に際して,常時,大気浮遊物質および微生物侵入の危険にさらされているが,これに対する防御機構も巧妙に発達している.これらは機械的,免疫学的および生化学的防御機構に大別されている(表1)1).
たとえば,Staphylococcus aureusやStreptococ-cus pneumoniaeは,健常成人の鼻咽頭粘膜に正常細菌叢として存在し得るが,これらが下気道へ落下(microaspiration)しても,粘液線毛輸送機能(mucocilliary clearance)および肺胞食細胞による貪食作用により炎症が容易に伸展波及しない仕組みになっている.しかしながら,先天的あるいは後天的原因により正常防御機構に破綻が生ずれば,病原菌の侵入,沈着,増殖を許す結果となり,下気道感染(肺炎)が成立する.このように肺炎は,宿主側(host)の防御機能と病原菌(pathogen)の間の均衡破綻が発症のtriggerになることが多い.
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