特集 関節リウマチ
治療 関節リウマチ治療のポイント
Difficult-to-Treat RA(D2T RA)の現状と課題
髙梨 敏史
1
1慶應義塾大学医学部リウマチ・膠原病内科/臨床研究推進センター
キーワード:
Difficult-to-Treat RA(D2T RA)の現状と課題
,
▶RA診療は飛躍的な進歩を遂げたが,依然として治療目標達成が困難な集団が存在し,Difficult-to-Treat RA(D2T RA)と呼ばれる.
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▶①複数の生物学的製剤やJAK阻害薬が無効,②RAの活動性が残存,③リウマチ医や患者がRAの管理が困難と考えている,の3項目を満たす場合にD2T RAに分類される.
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▶D2T RAは実臨床において6~28%存在する.
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▶D2T RAのリスクとして,女性,長期罹病歴,RFや抗CCP抗体陽性,合併症,高疾患活動性があげられる.
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▶D2T RAは大きく炎症性D2T RAと非炎症性D2T RAに分けられ,臨床的特徴が異なる.
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▶D2T RAの特徴は個々の症例で大きく異なり,個別のアプローチが必要である.
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▶D2T RAの約半数は治療により疾患活動性,機能障害の改善が期待できる.一方で約半数は改善が難しい.
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▶D2T RAは5年間に5%が死亡し,合併症の存在やグルココルチコイド使用がリスクファクターである.
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▶今後は治療成績向上に向けて,治療効果予測ができるようなバイオマーカーの探索などの研究を行う必要がある.
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▶D2T RAをどのように治療するのかという視点に加えて,いかにしてD2T RAにさせないかという未然に防ぐアプローチが重要である.
Keyword:
Difficult-to-Treat RA(D2T RA)の現状と課題
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▶RA診療は飛躍的な進歩を遂げたが,依然として治療目標達成が困難な集団が存在し,Difficult-to-Treat RA(D2T RA)と呼ばれる.
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▶①複数の生物学的製剤やJAK阻害薬が無効,②RAの活動性が残存,③リウマチ医や患者がRAの管理が困難と考えている,の3項目を満たす場合にD2T RAに分類される.
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▶D2T RAは実臨床において6~28%存在する.
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▶D2T RAのリスクとして,女性,長期罹病歴,RFや抗CCP抗体陽性,合併症,高疾患活動性があげられる.
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▶D2T RAは大きく炎症性D2T RAと非炎症性D2T RAに分けられ,臨床的特徴が異なる.
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▶D2T RAの特徴は個々の症例で大きく異なり,個別のアプローチが必要である.
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▶D2T RAの約半数は治療により疾患活動性,機能障害の改善が期待できる.一方で約半数は改善が難しい.
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▶D2T RAは5年間に5%が死亡し,合併症の存在やグルココルチコイド使用がリスクファクターである.
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▶今後は治療成績向上に向けて,治療効果予測ができるようなバイオマーカーの探索などの研究を行う必要がある.
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▶D2T RAをどのように治療するのかという視点に加えて,いかにしてD2T RAにさせないかという未然に防ぐアプローチが重要である.
pp.1248-1252
発行日 2025年8月1日
Published Date 2025/8/1
DOI https://doi.org/10.50936/mp.42.08_022
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はじめに
関節リウマチ rheumatoid arthritis(RA)を取り巻く環境は最近十数年で劇的な変化を遂げた.2010年米国リウマチ学会 American College of Rheumatology(ACR)/ 欧州リウマチ学会European Alliance of Associations for Rheumatology(EULAR)のRA分類基準により早期診断が可能となり,さらに目標達成に向けた治療 Treat-to-Target(T2T)の普及,生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬biologic disease-modifying antirheumatic drug(bDMARD)やJanus kinase(JAK)阻害薬の登場,エビデンスに基づいた治療推奨の普及などによりRA診療はパラダイムシフトを起こした.その結果,約6~7割が寛解,8~9割が低疾患活動性を達成可能な時代となった.しかしながら約5~20%が依然として,さまざまな理由で疾患活動性の制御が困難であり,Difficult-to-Treat RA(D2T RA)やrefractory RA, problematic RAなどと称され, 解決すべきアンメットニーズとして注目を浴びている.2020年秋にEULARからD2T RAの定義が発表され,以降,実臨床におけるD2T RAに関する研究が報告され,その実態が明らかになり始めている.本稿では,D2T RAの概念,臨床的特徴,予後,マネージメントに関して概説していく.

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