最新基礎科学/知っておきたい
RANKL-RANK
田中 栄
1
1東京大学医学部整形外科
pp.68-70
発行日 2004年1月1日
Published Date 2004/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408100352
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骨形成を担う骨芽細胞と,骨吸収を担う破骨細胞の起源がかなり初期の段階で異なっている,すなわち骨芽細胞は未分化間葉系細胞から,破骨細胞は造血幹細胞から分化することが明らかになったのはそれほど古いことではない1,3).生体において骨形成・骨吸収がバランスよく調節されており,骨組織のホメオスタシス(恒常性)が保たれるという事実は,これらの起源を異にする細胞がお互いの分化・機能発現に強く影響を及ぼしあっている可能性を示唆する.しかしながら骨組織,そして骨の細胞(特に破骨細胞)に対する分子生物学的なアプローチはきわめて困難であり,細胞間相互作用に関与する分子の存在は,永らく仮説にとどまった.
このような文脈の中で,receptor activator of NF-kappa ligand(RANKL)およびその受容体RANKのクローニングとその骨代謝への関与の解明は,20世紀後半の骨代謝研究領域において最も重要な発見の1つであったといっても過言ではない5).骨芽細胞によって産生されるRANKLが破骨細胞の分化・活性化を制御するという発見は,1981年にRodan & Martinによって提唱された,「骨芽細胞が破骨細胞の分化・活性を調節する」という仮説を分子の言葉で詳らかにしたといえる4).また活性化したTリンパ球がRANKLを発現するという事実は,関節リウマチをはじめとする免疫疾患と骨代謝異常との関係を理解するうえでの重要な橋渡しになった.なによりその同定からわずか5年の間に発表された1,300以上にものぼるRANKL-RANK関連の論文数が,その重要性を雄弁に物語っている.
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