特集 上部消化管疾患
セミナー 最新の実地診療のポイントの整理と活用
食道運動障害の診断と治療
秋山 純一
1
,
横井 千寿
1
1国立国際医療センター消化器内科
キーワード:
食道運動障害の診断と治療
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▶食道運動障害は,食道体部の蠕動運動障害または上下部食道括約筋の弛緩障害によって起こり,つかえ感,胸痛,逆流などの症状を引き起こす.
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▶食道のつかえ感を有する場合,まずEGDを施行し,疾患を鑑別することが必要である.また,次のステップとして食道運動障害の確定診断のためHRMを行う.
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▶胸痛のみを訴える患者では,冠動脈疾患を除外し,胃食道逆流症の鑑別が必要である.その後spastic motor disorderの可能性を考えてHRMを施行する.
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▶アカラシアの内視鏡所見として,”食道内腔の拡張・蛇行”,”食物残渣や液体の貯留”,”食道粘膜の白色化・肥厚”,” EGJの機能的狭窄”などが知られており,”corkscrew食道”は,type Ⅲアカラシアを含む食道痙攣性疾患で認められることがある.
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▶食道造影検査では,アカラシアでは食道内にバリウムが貯留し,EGJで狭小化する.
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▶HRMによる食道運動障害の分類としてシカゴ分類(第4版)が広く用いられている.
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▶アカラシアに対する治療の第一選択として,PD,POEM,LHMがあり,補助治療として,BTX注入がある.
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▶EGJOOに対する治療の第一選択としては,BTX注入,薬物療法,逆流症状が主であれば酸分泌抑制薬などの保守的な治療が推奨され,PDや筋層切開などの侵襲的な治療は,限られた患者に対して検討される.
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▶DESの治療は,嚥下障害と非心臓性胸痛の患者では平滑筋弛緩薬を,効果がなければBTX注入を行う.胸痛を訴える患者ではneuromodulationが有効な場合もある.これらの薬物療法が奏効しない場合,POEMまたはLHMを検討する.
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▶IEMに対して食道収縮力を改善するための有効な薬物治療はないため,主要症状の改善とGERD治療にフォーカスした対策(内視鏡的拡張術,生活習慣の改善,neuromodulationや認知行動療法など)を行う.
Keyword:
食道運動障害の診断と治療
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▶食道運動障害は,食道体部の蠕動運動障害または上下部食道括約筋の弛緩障害によって起こり,つかえ感,胸痛,逆流などの症状を引き起こす.
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▶食道のつかえ感を有する場合,まずEGDを施行し,疾患を鑑別することが必要である.また,次のステップとして食道運動障害の確定診断のためHRMを行う.
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▶胸痛のみを訴える患者では,冠動脈疾患を除外し,胃食道逆流症の鑑別が必要である.その後spastic motor disorderの可能性を考えてHRMを施行する.
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▶アカラシアの内視鏡所見として,”食道内腔の拡張・蛇行”,”食物残渣や液体の貯留”,”食道粘膜の白色化・肥厚”,” EGJの機能的狭窄”などが知られており,”corkscrew食道”は,type Ⅲアカラシアを含む食道痙攣性疾患で認められることがある.
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▶食道造影検査では,アカラシアでは食道内にバリウムが貯留し,EGJで狭小化する.
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▶HRMによる食道運動障害の分類としてシカゴ分類(第4版)が広く用いられている.
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▶アカラシアに対する治療の第一選択として,PD,POEM,LHMがあり,補助治療として,BTX注入がある.
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▶EGJOOに対する治療の第一選択としては,BTX注入,薬物療法,逆流症状が主であれば酸分泌抑制薬などの保守的な治療が推奨され,PDや筋層切開などの侵襲的な治療は,限られた患者に対して検討される.
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▶DESの治療は,嚥下障害と非心臓性胸痛の患者では平滑筋弛緩薬を,効果がなければBTX注入を行う.胸痛を訴える患者ではneuromodulationが有効な場合もある.これらの薬物療法が奏効しない場合,POEMまたはLHMを検討する.
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▶IEMに対して食道収縮力を改善するための有効な薬物治療はないため,主要症状の改善とGERD治療にフォーカスした対策(内視鏡的拡張術,生活習慣の改善,neuromodulationや認知行動療法など)を行う.
pp.1022-1027
発行日 2025年7月1日
Published Date 2025/7/1
DOI https://doi.org/10.50936/mp.42.07_011
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はじめに
食道は,嚥下した飲食物を咽頭から胃へ輸送する役割を担っているが,これには制御された食道体部の蠕動運動と,嚥下に伴う上下部食道括約筋の弛緩が必要不可欠である.食道運動障害は,食道体部の蠕動運動障害または上下部食道括約筋の弛緩障害によって起こり,嚥下障害(つかえ感),胸痛,逆流(胸やけ・呑酸)などの症状を引き起こす.一般的には,固形物の嚥下障害は食道の器質的な閉塞を,液体の嚥下障害は食道運動障害を想起する.

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