臨床医のための乳腺基礎医学
ストレス,コーチゾール,乳癌
笹野 公伸
1
1東北大学大学院医学系研究科病理病態学講座病理診断学分野教授/東北大学附属病院病理部部長
pp.25-28
発行日 2016年2月15日
Published Date 2016/2/15
DOI https://doi.org/10.34449/J0096.02.01_0025-0028
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「緒言」外因,内因双方に由来する種々のストレスは生体の視床下部-下垂体-副腎系を顕著に活性化し,各々視床下部,下垂体前葉から分泌されるcorticotropin releasing hormone(CRH),adrenocorticotropic hormone(ACTH)の作用により副腎皮質束状層から糖質コルチコイドであるコーチゾールが分泌される.このコーチゾールはほぼ全身の組織でその発現が認められている特異的受容体である糖質コルチコイド受容体(glucocorticoid receptor:GR)を介して生体全体としてストレスに対応することは,Selyeが提唱してきて以来よく知られてきた.さて,乳癌とストレスとの間の関係に際しては,どちらかというと癌の発生・進展との関係を心理学的あるいは精神医学的に解析する研究が従来は主であった1).しかし近年,GR自体が多くの乳癌細胞で発現していることが示されてきて,ストレスは上述のように乳癌患者に心理面を含む全身的な影響を及ぼすばかりでなく,GRを介して乳癌細胞そのものに影響を及ぼしている可能性が示唆され,大きな関心をもたれるようになった2)-4).
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