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慢性便秘に対して,わが国ではアントラキノン系刺激性下剤が使用されることが多いが,その有効性や副作用に関するランダム化比較試験はない。一方,海外ではジフェニール系刺激性下剤が使用される場合が多く,すでにこれまでにいくつかのランダム化比較試験でその有効性が証明されている。米国消化器病学会の「便秘症診療ガイドライン」および日本消化器病学会関連研究会の定める「慢性便秘症診療ガイドライン2017」のいずれにも刺激性下剤は長期連用せず,必要時にのみ使用することが勧められている。その理由として,刺激性下剤には短期投与による虚血性大腸炎の発症リスクのみならず長期連用による耐性の問題が挙げられている。これまでに刺激性下剤の長期連用で依存性や耐性が出現し,大腸蠕動運動が低下し難治性便秘となる危険性を指摘した報告を数多く認める。さらに,刺激性下剤の長期連用により生じるとされる大腸黒皮症が大腸腺腫や大腸がんのリスクとなる可能性も指摘されている。しかしながら,いずれもエビデンスレベルとしては高くなく,わが国で頻用されているアントラキノン系刺激性下剤の長期連用の有効性と副作用に関してはいまだ不明な点が多く,今後の重要な検討課題と考えられる。以上のことから,刺激性下剤の長期連用による懸念事項に関するエビデンスレベルは高くないものの,一定の確率で依存性や耐性を示す症例は認められる。また,同薬剤の長期連用による腸管神経および腸管平滑筋への影響や腫瘍のリスクの関連性については今なお不明な点が多く,決して関連がないとはいえない。したがって,刺激性下剤の長期連用は安全であるとは断言できず,漫然と安易に使用することは,避けるべきであると考えられる。●本企画は問題点をクローズアップすることを目的としており,テーマに対してあえて一方の見地に立った場合の議論であり,必ずしも論者自身の確定した意見ではありません。
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