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今回の消化器研究最前線は,5名の診療・研究の最前線にいる若手消化器病医に2020年下半期に一流誌に掲載され,最もインパクトを受けた英文論文を2編.選んでいただき,全体のバランスを考慮して各1編の抄訳をお願いした。ここ数回はCOVID-19感染と消化器疾患関連論文が選ばれている。名古屋市立大学久保田准教授はPPI服用とCOVID-19感染リスクを解析したAm J Gastroenterol掲載論文を紹介。50,000人を超える対象者の大規模解析からPPI服用者は1日2回服用でOR=3.67,1日1回服用でOR=2.15と有意に感染リスクが上昇する。COVID-19は消化管にも感染するので予想通りの結果であり。これまでも指摘されているようにPPI常用者では糞便などを介する感染が生じる可能性が高い。4月から北海道大学薬学部教授に就任した大西教授はコウモリおよびヒト腸管オルガノイドを用いた試験管レベルでのCOVID-19感染研究を報告したNat Med掲載論文を紹介。前論文同様に消化管を介する感染経路が証明された。感染受容体であるACE2,TMPRSS2の発現も示されている。最近,武漢ウイルス研究所が発生源ではないかとの情報が米国から再び発信されているが,発生源はともかくコウモリを介する可能性を示した報告である。著者が中国人であることも留意したい。川崎医科大学半田講師は日本におけるCAM感受性に基づくテーラーメイド除菌の効果を後ろ向きに検討したHelicobacter掲載論文を紹介。既報同様,PPI使用ではCAM感受性試験は意味があるが,VPZでは意味がなく85%程度の除菌率である。MNZのMICは胃内pH非依存的なのでPPI,VPZともにMNZ除菌では90%以上の除菌率である。最近,終了した厚労科研班研究の日本のMNZ耐性菌は5%で,近年,変化なく,一次除菌としての使用を提言している。昨年,東京医科大学教授に就任した杉本教授は早期胃がんESD後の出血の予測モデル(BEST-J)の有用性を評価したGut掲載論文を紹介。抗血栓薬使用,腫瘍径などから構成される因子から定量的にリスクを設定,BEST-Jスコアの出血予測の有用性が明らかにされている。秋田大学下平助教はIBDでの抗TNFα抗体製剤無効時の他剤スイッチ時のアザチオプリン併用の有用性を検討したGut掲載論文を紹介。アザチオプリン併用により治療効果が向上する(22%vs.77%)ことが示されている。臨床上も非常に有益な好論文が紹介されている。
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