TOPICS OF GI 消化器疾患のトピックス
第31回 消化管機能検査の進歩
伊原 栄吉
1
1九州大学大学院医学研究院・消化器代謝学 准教授
pp.56-61
発行日 2020年6月30日
Published Date 2020/6/30
DOI https://doi.org/10.34449/J0039.16.01_0056-0061
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消化管機能変化に起因する消化管疾患でまず想起される疾患は,Rome Ⅳ基準で定義され,機能性ディスペプシアおよび過敏性腸症候群を代表とする「機能性消化管疾患」である。「機能性消化管疾患」は,functional gastrointestinal disorder(FGID)の日本語訳である。「Disorder」は「疾患」と和訳するのが妥当であることから,これまで広く認知されていた「機能性消化管障害」から「機能性消化管疾患」という用語が推奨されるようになった1)。「機能性消化管疾患」は,消化管機能変化に起因する疾患の中でも,正常範囲または正常に近い消化管の機能変化にも関わらず,知覚過敏が絡むことで辛い症状を訴える疾患群である。一方,もう1つの消化管機能変化に起因する消化管疾患は,明らかに正常から逸脱する消化管機能変化を伴うことで辛い症状や合併症を引き起こす「消化管機能障害」とも呼称可能な疾患群である。胃食道逆流症,胃麻痺,慢性特発性偽性腸閉塞症に代表される。正常から逸脱するという点において「消化管機能障害」は器質性疾患である(図1)。治療方針の相違から,実臨床にてこの2つの疾患群を鑑別することは大変重要であるが,「消化管機能障害」は,器質性疾患とはいえこれまでの消化管機能検査の限界から鑑別診断および病態評価が困難な場合があった。そのような中で,最近,画期的な種々の消化管機能検査が開発され,消化管機能変化に由来する消化管疾患診療が飛躍的に進歩した。本稿では,実臨床にインパクトをもたらしたいくつかの消化管機能検査について概説する。
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