トピックス
肺機能検査の進歩
井川 幸雄
1
1慈恵医大中検
pp.236
発行日 1980年3月1日
Published Date 1980/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202020
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肺機能検査は口(鼻の代用)からの気体の出入を調べるスパイログラフィーを中心とする換気機能検査でスタートした.やがて,動脈血の血液ガス分析が普及しはじめ,臨床的に満足できる正確度・精密度・迅速性を持つ自動分析器が登場し,広く行われるようになった.動脈血液ガス正常であれば,とりもなおさず呼吸機能は正常,あるいは少なくとも十分に代償されていることになる.呼吸機能検査は画期的な進歩を遂げたわけで,多くの疾患についてのデータの集積は,呼吸器・腎疾患に限らず,内分泌・消化器・代謝・脳神経障害・中毒・感染症などについての呼吸生理の面から多くの興味ある知見となっている1).
しかし,考えてみれば,口から得られる多くの情報も動脈血ガスの情報も,肺がその機能を果たした結果出てくる流出内容を一括平均して捉えた出力情報で,いわば肺そのものは均一なコンパートメントとして捉えるしかなかった.例えば生理の教科書でも,人の肺胞を引き伸ばしてみると,テニスコートぐらいの面積があり,この薄い膜を介して吸気と血液が触れ合い,分圧の高いほうから低いほうへとガスの移動が起こるというようなイメージを与えている.しかし,このイメージは考えてみると,生体内の臓器というよりも,人工腎臓のような透析器を思い浮かべさせるものである.実際の腎臓と人工腎臓との差に近いものが,これらのイメージと実際の肺には存在している.
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