特集 CURRENT TOPICS 便秘症診療の最前線
巻頭言
三輪 洋人
1
1兵庫医科大学消化器内科学 主任教授
pp.11-11
発行日 2020年6月30日
Published Date 2020/6/30
DOI https://doi.org/10.34449/J0039.16.01_0011-0011
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21世紀に入ってからの医学の進歩は目覚ましく,消化器領域に関してもピロリ除菌による胃潰瘍や胃がんの減少,ウイルス性肝炎の治療薬の開発などブレークスルーとも言える革新的な治療法の出現とともにこれらの疾患は克服されようとしている。また,わが国の消化管領域の診療・研究は形態学を中心に発展してきたが,それは国民のQOLへの関心の高まりを背景として機能性消化管障害にも広がってきた。しかし,これら消化器診療の大きなうねりの中にあって便秘診療は変化に取り残されていた暗黒の領域であった。便秘については医学部の講義でもほとんど取り上げられることはなく,また研究者の興味の対象とはなっていなかった。便秘に関する学会発表や論文執筆がほとんどなかったことはこのことを雄弁に物語っている。膨大な数の慢性便秘症の患者はこれまで慣習的に経験的に使用されてきた酸化マグネシウムと大腸刺激性下剤によってとりあえず治療され,これが両薬剤しか使用されないというわが国独自の処方習慣を生んだ。しかしようやく便秘診療にも転換期が訪れようとしている。地中で育っていた植物が一斉に芽を出すように,最近多くの新しい便秘薬が登場し,消化器専門医の目がこの疾患に向き始めたのである。
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