INTERVIEW 対談
わが国のがん予防対策を問う
浅香 正博
1
,
中川 恵一
2
1北海道医療大学学長
2東京大学医学部附属病院放射線科放射線治療部門准教授
pp.5-11
発行日 2020年2月20日
Published Date 2020/2/20
DOI https://doi.org/10.34449/J0039.15.02_0005-0011
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浅香 本日は東京大学医学部附属病院放射線科の中川先生をお招きし,がんの予防対策についてお話をしたいと思います。私は数十年,北海道大学消化器内科で消化器がんの診断・治療に携わってきましたが,2011年に北海道大学を定年退職した後,「がん予防内科」という寄附講座で5年間,特任教授を務めました。そこでの経験を通じて痛感したのは,がんの予防対策がうまくいけば,多くの命が助かる可能性があるということです。そこで予防に目覚め,日本のがん予防対策の状況について考えるようになり,この分野で多くの発言をされている中川先生を知りました。今日は胸襟を開いてがんの予防について話し合いたいと思います。中川先生は以前,がん対策推進協議会に属しておられましたね。中川 はい。2007年に「がん対策基本法」が発足して,その中で制定された「がん対策推進協議会」で10年間,委員を務めました。浅香 がん対策基本法は画期的といわれましたが,当初は抜け穴だらけだったと思います。タバコ1つとっても最初,未成年者の喫煙をなくそうというものの,成人には具体的な対策の指標はありませんでした。その後,かなり充実してはきたようですが。中川 そうですね。発症リスクを減らす一次予防という趣旨で足りない部分はあったと思います。胃がん対策については,特定健診において40歳以降で毎年胃X線検査となっていたところ,2016年度からは50歳以降で偶数年あるいは内視鏡検査が選べるとなりました。一次予防という趣旨では,がんの原因を知ることが重要ですが,日本におけるがんの原因のトップは,男性は喫煙ですが女性は感染症で,実に原因の20%を占めている状況です。
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