特集 喫煙と禁煙
わが国における喫煙対策の展望
星 旦二
1
1国立公衆衛生院
pp.277-282
発行日 1988年4月10日
Published Date 1988/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207514
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新しい健康政策と保健活動
アメリカ政府発行の"Healthy People"(健康な人々)報告書1)によると,「喫煙は疾病を予防する上で明示された危険因子のうち,最も制御可能なものである」とされ,喫煙対策は,健康政策の重要な課題としてとり組まれている。これらの報告書の特徴は,健康を向上させるための施策として,これまでの医療中心から,疾病の予防や健康増進をめざす方向への発想転換が必要であることを科学的に示したことである。その根拠として,第10位までの死亡について,その原因を検討した試算では,「保健医療(Health care)システムの不適切さ」が死亡原因の10%に寄与するのに比べて,「不健康な生活習慣ないし行動様式」は50%であると言う(表1)。この試算は,疾病予防にはたす個人の役割が,大きいことを示している。
健康を守るための具体的な行動様式(表2)の中では,禁煙の優先性が第一である。この新しい健康政策を,Lorenz2)は,「この政策は公衆衛生の革命である」と述べている。わが国の西田3)の研究でも,近代の死亡率低下にたいして医療技術がはたした役割が大きくはないと報告している。これからの新しい保健活動を展望していく上で示唆に富む報告と言えよう。
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