特集 CURRENT TOPICS 2nd GAST SUMMIT JAPAN学術講演会ハイライト
特別講演 消化器領域における癌幹細胞標的治療の可能性
妹尾 浩
1
1京都大学大学院医学研究科消化器内科学講座 教授
pp.18-20
発行日 2018年3月15日
Published Date 2018/3/15
DOI https://doi.org/10.34449/J0039.13.02_0018-0020
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正常な臓器には臓器固有の幹細胞が存在し,自己複製してさまざまな分化段階の子孫細胞を作っている。癌も1つの組織であり,癌幹細胞が自己複製して子孫癌細胞を供給して,階層性があるのではないかと19世紀半ばから提唱され,1997年には癌幹細胞の存在が科学的に証明された。癌幹細胞は癌組織形成以外に,既存の抗癌剤治療に抵抗性を示すことも特徴の1つとされており,よりアグレッシブなphenotypeを獲得していくことが示唆されている。これが既存の癌治療抵抗性の大きな原因の1つといわれていることから,既存の抗癌剤治療と癌幹細胞排除を組み合わせれば,進行癌も治療可能ではないかと考えられる。しかし,癌幹細胞マーカーは対応する臓器の正常な細胞にも発現するため,正常の組織幹細胞と癌幹細胞を区別することは困難で,正常組織に障害をもたらし,甚大な副作用が危惧される。したがって,癌幹細胞特異的な新しいマーカーの同定は,癌幹細胞を標的とする癌治療を実際に開発する上で欠かすことができない。
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