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緑内障は,選択的な網膜神経節細胞死によって特徴付けられる進行性の多因子性神経疾患である1).不可逆性の網膜神経節細胞死は,コントラスト感度の低下を伴った進行性の視野欠損をもたらす2).網膜神経節細胞死には,眼圧上昇に加えて,遺伝的素因,環境要因などが関与していることが示唆されている3).これらの因子による眼内におけるさまざまな慢性的なストレス負荷により,網膜・視神経変性がもたらされると考えられる.疾患に関連する遺伝子は,ある一つの遺伝子変異により疾患を発症する疾患原因遺伝子と,疾患を発症しやすい体質を規定する疾患感受性遺伝子に分類される.原発開放隅角緑内障(POAG)の原因遺伝子については,その候補として少なくとも20遺伝子座がマッピングされており,そのなかから1997年にMyoocilin(MYOC,GLC1A)遺伝子の発見を皮切りに,Optineurin(OPTN,GLC1E),WD-40-repeat 36(WDR36,GLC1G),Neurotrophin-4(NT4,GLC1O)が同定された4)-7).しかし,これらの遺伝子変異によると考えられるPOAGの割合は約10%であり,その他のほとんどの緑内障は複数の疾患感受性遺伝子と環境要因により発症する多因子疾患であると考えられる8)-10).現在,全ゲノムの一塩基多型(single nucleotide polymorphisms:SNP)を対象としたゲノムワイド相関解析(genome-wide association study:GWAS)による緑内障感受性遺伝子の探索が進められており,その解析により緑内障病態解明が飛躍的に発展することが期待される.また,その疾患原因遺伝子または感受性遺伝子がどのように病態発症並びに進行にかかわっているか,その分子機構について理解することは,緑内障に共通する病態発症機構を解明する手がかりとなる可能性がある.また近年,神経細胞が死に至る過程で正常に機能しない異常なタンパク質が小胞体に蓄積することにより引き起こされる小胞体ストレスが,細胞死を引き起こす機序として注目されており,遺伝性または孤発性を含めた緑内障の病態にもこの小胞体ストレス機構が関与していることが示唆されている.
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