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●小胞体ストレス誘導性アポトーシス経路
細胞は小胞体機能障害が回復困難なほど大きい場合,アポトーシス経路を活性化し,障害細胞自体を処理することにより周辺の細胞を守る。小胞体機能の改善・維持に働く小胞体ストレス経路の場合と同じく,小胞体ストレス誘導性アポトーシスの場合も小胞体膜上に存在する三種類の小胞体ストレスセンサー分子(PERK,IRE1,ATF6)が小胞体機能障害のため小胞体内に構造異常タンパク質が蓄積したことを感知し,活性化されることから一連の反応が始まる1,2)。一般的に程度が強い刺激,持続時間が長い刺激が小胞体ストレス誘導性アポトーシス経路を活性化するが,同じ小胞体ストレスセンサーの活性化に始まりながら,細胞保護に働く場合と,アポトーシス誘導に働く場合とで,どのようにして反応機構を切り替えるのかは明確ではない。また,アポトーシス経路が活性化された状況下でも,同時に小胞体シャペロン分子BiPの誘導など小胞体機能改善維持・細胞保護機構も誘導されている。そのため,最終的に細胞死に至るか否かは両方の反応系の作用のバランスで決まる。
その後の過程は複雑で,解明されていない部分も大きいが,最終的にはミトコンドリアにアポトーシスシグナルが伝わり,ミトコンドリアからシトクロムcが流出することでサイトソルのカスパーゼファミリー分子の活性化が起こり,細胞はアポトーシスを起こす(図)。ミトコンドリアへアポトーシスシグナルを伝える経路の分子としては,小胞体ストレス誘導性転写因子CHOP(C/EBP homologous protein),ストレス活性化タンパク質キナーゼ(stress-activated MAP kinase)であるJNK(c-Jun N-terminal kinase)とp38(p38 MAP kinase)が重要である。この三種類の分子が中心的な役割を担うそれぞれの経路は,クロストークしながら並立的に進行する。
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