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特集 ストレス応答の分子メカニズム――最新知見と臨床応用への展望
小胞体ストレス応答の分子機構および疾患治療を見据えた研究の現状と課題
The molecular mechanisms of stress response in the endoplasmic reticulum and current issues for disease therapy
村尾 直哉
1
,
西頭 英起
1
Naoya MURAO
1
,
Hideki NISHITOH
1
1宮崎大学医学部機能生化学
キーワード:
小胞体ストレス
,
プロテオスタシス
,
小胞体ストレス応答(UPR)
,
神経変性疾患
,
化学シャペロン
Keyword:
小胞体ストレス
,
プロテオスタシス
,
小胞体ストレス応答(UPR)
,
神経変性疾患
,
化学シャペロン
pp.594-598
発行日 2025年5月17日
Published Date 2025/5/17
DOI https://doi.org/10.32118/ayu293070594
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小胞体は,主な機能のひとつとして細胞内で膜タンパク質や分泌タンパク質の適切な折り畳みを担う細胞小器官(オルガネラ)であり,生体の恒常性維持に必須の役割を果たしている.さまざまな内的・外的な環境変化により小胞体内で不良タンパク質が蓄積すると,細胞は小胞体ストレス状態に陥り,小胞体ストレス応答(UPR)を介して恒常性が維持される.UPRは,PERK,IRE1,ATF6の3つのセンサータンパク質を介してシグナルを伝達し,翻訳を抑制するとともに,異常タンパク質の分解を促進する.しかし,過剰なストレスはアポトーシスを誘導し,組織の恒常性を破綻させる.この小胞体ストレスは,がん,代謝疾患,炎症性疾患,神経変性疾患などさまざまな疾患と関連しており,化学シャペロンやUPR調節薬を用いた治療法の研究が進められ,臨床応用への展開も進んでいる.特に神経変性疾患では,異常タンパク質の蓄積による小胞体ストレスの関与が顕著であり,神経細胞死を引き起こす.治療法の確立には,標的細胞への選択的作用の向上や副作用の抑制が課題とされており,さらなる研究が求められている.

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