連載 Medical Scope
小児ヘルペスウイルス感染症の疫学変化
吉川 哲史
1
1藤田医科大学医学部小児科学
pp.54-58
発行日 2024年3月10日
Published Date 2024/3/10
DOI https://doi.org/10.34449/J0001.41.01_0054-0058
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ヘルペスウイルスは2本鎖DNAウイルスで、RNAウイルスのような遺伝子変異の可能性は低く、宿主に潜伏感染するという特徴をもち個々の宿主に共生する形で進化してきたウイルスである。ほとんどのヒトヘルペスウイルスは小児期に初感染し、その後潜伏感染、再活性化し回帰発症する。本稿では、ワクチン定期接種化により患者数が激減している水痘帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus:VZV)感染症と、最近年長化が指摘されているhuman herpesvirus 6B(HHV-6B)初感染による突発性発疹(突発疹)の2つのヒトヘルペスウイルス感染症を取り上げ、その動向、問題点について概説する。VZV初感染に伴う水痘患者数は、ワクチン定期接種化後減少し続けている。一方でワクチン接種後罹患の軽症例が増え、実験室診断の重要性が増している。さらに、帯状疱疹患者の推移にも注意が必要な上、全ての小児がワクチン接種を受ける時代になり、帯状疱疹様の皮疹を認めた場合は、野生株VZVかワクチン株VZVかの鑑別も必要になってきている。一方、HHV-6B初感染に伴う突発疹は確かに年長化が進んでおり、2歳以上の症例も珍しくない状況になってきている。そのような年長例は、典型的な突発疹の臨床経過を示す割合が低く、突発疹と診断されていない症例も多いと考えられる。また、新型コロナウイルス感染症に対する感染予防策の徹底で多くの小児感染症患者数が減少したなかで、家族内の水平感染が主体と考えられるHHV-6B初感染例は減少せず、特にERを受診した複雑型熱性けいれん患児の90%をHHV-6B初感染例が占めていた。
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