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世界的なメタボリックシンドローム人口の増加に伴い,非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)およびその進行病態である非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH)の罹患者が増加している。これらは自覚症状には乏しいものの,NASHの一部は肝硬変や肝細胞がんに発展するため,早期に診断することが望ましい。また,肝硬変や肝細胞がんの発生母地として,抗ウイルス薬の進歩に伴って従来から大部分を占めるウイルス性肝炎の割合が減少し,nonB,nonC肝炎の割合が増加している。nonB,nonC肝炎の多くはNASHと考えられ,NAFLD/NASHの診断と病態解明の重要性が高まっている。NAFLD/NASHの診断は生検による病理診断がゴールドスタンダードであるが,侵襲性やサンプリングエラー,コストが課題であり,非侵襲的な超音波検査,CT,MRIによる脂肪化の判断や,MRエラストグラフィー,トランジェントエラストグラフィーによる線維化の評価も行われている。しかし,わが国で9~30%程度にも上るというNAFLDの有病率を考慮すると,このような非侵襲的画像検査でも全例に施行することは困難で,Fib4-index,NAFIC score,NAFLD fibrosis scoreといった血液検査などを主体とする効率的なスコアリングシステムも重要である。本稿で取り上げる腸内細菌叢もNASHの進行に伴って異常が観察されることが明らかになっており,効率的なハイリスク症例の囲い込みに有用であると考えられるようになってきた。また,従来からNAFLD/NASHの病態としては「two-hit theory」がよく知られており1),過栄養や運動不足,インスリン抵抗性による肝臓の脂肪蓄積がfirst hitとして働いてNAFLDを発症し,さらに酸化ストレス,小胞体ストレス,脂肪毒性,エンドトキシン,インスリン抵抗性などの炎症や線維化に関連する因子がsecond hitとして加わってNASHへと進行すると考えられていた。その後,実際にはこれらのステップは不可分であり,多因子が同時並行で関与するという「multiple-parallel hits hypothesis」2)が支持されるようになってきたが,いずれにしてもエンドトキシンや慢性炎症,インスリン抵抗性に関して腸内細菌叢の異常が注目されている。つまり,NAFLD/NASHにおける腸内細菌叢の異常は,疾患の存在を示唆するのみにとどまらず,病態の一部を担うことも明らかになり,治療法への応用が期待されている。「KEY WORDS」NASH,肝臓がん,Dysbiosis,SIBO,Leaky gut
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