特集 腸内細菌と全身疾患
特集にあたって 消化管からみた全身疾患~腸内細菌を橋渡しとして~
小川 佳宏
1
1九州大学大学院医学研究院病態制御内科学教授
pp.7-8
発行日 2020年12月20日
Published Date 2020/12/20
DOI https://doi.org/10.34449/J0001.38.12_0007-0008
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近年,消化・吸収を担う消化管を起点とする多臓器連関が生体の恒常性維持において重要な役割を果たすことが注目されている。消化管は,外界と交通し,内なる外として,pH変化,浸透圧変化,種々の消化酵素などの攻撃因子に常に曝露されるとともに,「非自己」である栄養素をエネルギー源として消化・吸収する。一方,小腸と大腸を中心に分布する腸内細菌は,食物繊維などの難消化性多糖の分解,胆汁酸の変換・抱合による脂肪吸収の促進,ビタミン・アミノ酸などの産生を担い,消化・吸収機能を補助して宿主と共生している。以上のような他臓器にはない特殊な環境として,消化管では外界の種々の刺激に反応して,迷走神経を中心とする神経系,全身臓器あるいは消化管局所において産生される種々の液性因子(ホルモン)による内分泌系や消化管粘膜上皮,あるいはバイエル板において活性化される免疫系が絶え間なく刺激されている。消化管における「神経系-内分泌系-免疫系」の3つの生体システムのバランスが生体の恒常性維持に重要な役割を果たす。近年,腸内細菌研究の飛躍的な進展により,消化管機能維持における唯一無二のものとして腸内細菌の観点から宿主の多臓器間ネットワークの仕組みが解明されつつある。
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