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認知症の多くにうつ症状・大うつ病の合併が認められることが知られている1)。うつ病の診断にはハミルトンうつ病評価尺度(Hamilton depression scale:HAM-D)やモンゴメリーアスベルグうつ病評価尺度(Montgomery–Åsberg depression rating scale:MADRS)のほか,自記式尺度の老年期うつ病評価尺度(geriatric depression scale:GDS)が用いられるが,認知症におけるうつの診断の場合には注意が必要である。これらの評価尺度は「患者本人」が「ここ最近の自分の状態」について「想起」して答える必要があり,その評価は「言語を介して」行われる。認知症により記憶をはじめとする認知機能障害がある場合には正確な評価が困難となる可能性があり,認知症におけるうつの診断には介護者評価も含めたDementia Mood Assessment Scale(DMAS)やCornell Scale for Depression in Dementia(CSDD)などが適しているとされる2)。「精神障害の診断と統計マニュアル第5版」(diagnostic and statistical manual of mental disorders 5th:DSM-5)で示される大うつ病性障害の症状,興味の減退や食欲の変化,睡眠障害,焦燥,集中力低下などは抑うつを伴わない認知症にもbehavioral and psychological symptoms of dementia(BPSD)として認めうる症状である2)。これらの症状を根拠とした認知症におけるうつ病の過剰診断・治療が問題とされているが,一方で適切な診断により認知症に合併するうつ病・抑うつ状態を見逃さないことも重要である。本稿では認知症におけるうつ病・抑うつ状態について,主に症候の評価を基にした診断と治療について論じる。「KEY WORDS」認知症,うつ病,アパシー,BPSD,抗うつ薬
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