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うつ病や双極性障害などの気分障害など,さまざまな精神疾患において,言語記憶,注意機能,言語流暢性,遂行機能など広範にわたって認知機能障害が認められる。「雇用はされても,就労後すぐに指示を忘れてしまい,上司を怒らせてしまう。早口で話しかけられ,同時に複数のことをするように依頼されるが,どれが最も重要な仕事なのか,何が最初に行うべき仕事なのかは不明瞭なままである。どうすればよいかわからず,不安で,仕事は手につかない」1)この例のように,認知機能障害を認めると,就労をはじめとした社会機能が悪化するのは想像に難くない。うつ病を経験した人の認知機能を評価した全24報のメタ解析を行った報告によれば,健常対照群に比べて“現在,大うつ病エピソードを満たす”うつ病の患者群では,顕著な認知機能障害が遂行機能(効果サイズ:-0.34〜-0.54),記憶(効果サイズ:-0.41〜-0.50),注意(効果サイズ:-0.65)に認められ,反応速度はおおむね維持されていた(効果サイズ:-0.07)2)。この傾向は抑うつ症状の寛解後も同様であった2)。一方,うつ病に比べると双極性障害においては,認知機能障害を呈する領域が広範にわたり,そのパターンは統合失調症と類似していた3)4)。うつ病相,躁病相,平常気分状態を通して認知機能障害は存在し,その程度は報告によって多少のバラつきはあるものの,健常者と比べて効果サイズ-1.0前後の低下をきたしていると想定される5)。一方,知的水準,性別,年齢などで調整した際には,効果サイズ-0.2〜-0.6程度の機能低下にとどまる,との報告もある6)。双極性障害患者の約40%は健常者と同等の認知機能を有するとの指摘もあり,評価にあたって認知機能の評価尺度の天井効果なども考慮する必要があるだろう5)。「KEY WORDS」気分障害における認知機能障害(cognitive impairment in mood disorders),社会機能,うつ病,双極性障害,機能的認知機能障害(functional cognitive disorders)
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