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ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(poly ADP-ribose polymerase;PARP)は,主にDNAの一本鎖切断(single strand break;SSB)に関与する酵素である。SSBの修復は塩基除去修復(base excision repair;BER)によって,また二本鎖切断(double strand break;DSB)の修復は相同組み換え(homologous recombination;HR)によって行われる1)-3)。BRCA1/2遺伝子はHRに関与しており4),BRCA1/2遺伝子が機能せずDSB修復に支障をきたしている細胞においてPARPを阻害すると,DNA修復の2つの機構が同時に障害され,細胞がアポトーシスに誘導される(合成致死:synthetic lethality)5)。PARP阻害薬「リムパーザ®錠」(一般名:オラパリブ)は,「プラチナ製剤感受性の再発卵巣がんにおける維持療法」を対象として使用が開始されているが,当初はBRCA遺伝子に生殖細胞系列変異(gBRCAm)をもつ遺伝性乳癌卵巣癌(hereditary breast and ovarian cancer;HBOC)患者が対象になると思われていた。gBRCAmだけでなく,腫瘍組織にBRCA変異を有する(tBRCAm*)症例など相同組み換え修復異常(homologous recombination deficiency;HRD)を示す腫瘍に対しても良好な予後改善効果が認められることから,「プラチナ感受性」が「HRD」の臨床的サロゲートマーカーとされ,多くの再発卵巣がん患者に対する新たな治療選択として大いに期待がもたれている。さらに先日,BRCA変異を有する進行卵巣がんに対する一次治療後の維持療法としても無増悪生存期間(progression free survival;PFS)を有意に延長することが発表された6)。本稿では,PARP阻害薬に関する臨床試験の概略から使用に際しての注意点を解説する。*tBRCAm=gBRCAm(生殖細胞系列変異)+sBRCAm(体細胞変異)。「KEY WORDS」poly ADP-ribose polymerase(PARP),BRCA, homologous recombination deficiency(HRD),プラチナ感受性再発,コンパニオン診断
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