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急性リンパ性白血病(acute lymphocytic leukemia;ALL)は,リンパ球が幼若な段階で悪性化し,がん化した病態であり,すべての年齢に生じるが,特に2~5歳の小児に発症のピークがあり,15歳未満の小児がんのなかで最も患者数が多く約25%を占める。一方,成人の1年間の発症率は約10万人に1人程度である。ALL全体ではB細胞系が多く約80~85%を占め,残りがT細胞系である。ALLの治療は,多剤併用化学療法であるが,化学療法抵抗性や,再発難治例では骨髄移植がこれまで最も有効な治療法として行われている。1960年代後半に始まった骨髄移植は,当初その治療効果は移植前に行う超大量化学療法,あるいは放射線治療が白血病細胞やがん細胞を殺すためと考えられていた。ところが,同種骨髄移植には,ドナーの免疫細胞が患者腫瘍細胞を殺す移植片対腫瘍(graft versus tumor;GVT)効果もあり,主にドナー由来T細胞が,腫瘍細胞を認識,傷害することで起こることが示された。GVT効果を示した腫瘍患者においてドナー由来T細胞が認識する腫瘍特異抗原が同定されたり1),患者・ドナー間でヒト白血球抗原(human leukocyte antigen;HLA)が部分的に異なる骨髄移植では,異なるHLAが腫瘍から欠失することで,腫瘍はその攻撃を逃れ再発するメカニズムであることなど,骨髄移植におけるがん免疫機序が報告された2)。しかしながら,骨髄移植のGVT効果では,移植しない限りドナーの免疫細胞が患者の腫瘍を認識するかどうかわからないこと,同種抗原が腫瘍だけでなく正常組織にも発現する場合に,重篤な副作用につながる危険性が障壁となっていた。腫瘍特異的な抗原を標的としたがん免疫療法においても,近年,明らかな治療効果や治癒が得られる症例が報告されるようになり,2013年に『Science』誌が選ぶBreakthrough of the Yearに「Cancer immunotherapy(がん免疫療法)」が選ばれている。その大きな理由の1つがキメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞(chimeric antigen receptor T-cell;CAR-T)療法である。「KEY WORDS」急性リンパ性白血病,CAR-T細胞療法,piggyBacトランスポゾン法,CD19
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