特集 遺伝子治療の現在
特集にあたって
小澤 敬也
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1東京大学医科学研究所附属病院病院長/東京大学医科学研究所遺伝子・細胞治療センターセンター長/東京大学医科学研究所先端医療研究センター・遺伝子治療開発分野教授
pp.7-8
発行日 2015年4月10日
Published Date 2015/4/10
DOI https://doi.org/10.34449/J0001.33.04_0007-0008
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1999年に開始されたX連鎖重症複合免疫不全症(X-linked severe combined immunodeficiency;X-SCID)に対する造血幹細胞遺伝子治療において,世界ではじめて遺伝子治療単独で明瞭な効果が認められ,その画期的成果が2000年に報告された。しかしながら,2002年以降,その遺伝子治療を受けた患児が次々と白血病を発症したことは,遺伝子治療全般に深刻な影響を与えた。レトロウイルスベクターを用いた遺伝子治療では,挿入変異による発癌リスクを無視できないと認識されるようになり,またさまざまな遺伝子治療の成功例がごく一部に限られていたことから,遺伝子治療の臨床試験は長らく停滞することとなった。しかし2008年頃から,アデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus;AAV)に由来するベクターを用いた遺伝子治療で,Leber先天性黒内障,血友病B,パーキンソン病などに対して臨床的有効性が示されるようになり,再び遺伝子治療に対する期待が膨らむようになった。
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