特集 全身をみて,腎・尿路疾患に気づく
Ⅲ.全身疾患に伴う腎・尿路疾患
コラム:1996年に発生した大規模集団感染による溶血性尿毒症症候群
五十嵐 隆
1
1国立成育医療研究センター
pp.187-188
発行日 2023年2月1日
Published Date 2023/2/1
DOI https://doi.org/10.34433/pp.0000000045
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1.堺市(人口約80万人)における腸管出血性大腸菌O157:H7集団食中毒と続発する溶血性尿毒症症候群患者1)
1996年7月12日の市立堺病院(現 堺市立総合医療センター)での夜間診療で,激しい腹痛,下痢,血便を主症状とする小学生が10人受診し,翌13日には堺市内の33小学校の255人の学童が同じ症状を訴えて堺市内の医療機関を受診した.これを受け,同日,堺市は堺市学童集団下痢症対策本部を設置し,情報収集,医療体制確保,原因究明等の活動を開始した.その後,同様の症状を訴え医療機関を受診する学童患者がさらに急増し,7月13日夜から14日にかけて堺市内の医療施設に2千名以上の患者が受診した.7月14日,堺市衛生研究所は有症者の26便検体のうち13検体から腸管出血性大腸菌O157:H7(以下,O157:H7)を検出し,学童集団下痢症の起因菌と断定した.さらに発生校数は61に増加し,9月25日の時点で患者数は6,561名(1次感染者:学童6,309名,教職員92名,二次感染者:160名)に及んだ.堺市による最終的集計では,医療機関を受診した総患者数は総勢12,680名であった.O157:H7感染症による入院患者総数は791名で,そのうち溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome:HUS)が121名発症(学童106名,学童家族8名,一般市民7名)した.HUSの内訳として,完全型が42名,不全型が79名であった.
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