特集 産婦人科漢方ステップアップ―三大処方の次なる一手とは?―
ねらい
寺内 公一
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1東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科茨城県地域産科婦人科学講座
pp.1-1
発行日 2023年1月1日
Published Date 2023/1/1
DOI https://doi.org/10.34433/og.0000000001
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日本漢方生薬製剤協会が2011年に全国の医師を対象として行った「漢方薬処方実態調査」によれば,産婦人科はほかのどの診療科よりも漢方薬を処方する医師の割合が高く,漢方薬が第一選択とされることが多く,また漢方薬のみが処方されている患者が多かったという.また同調査によれば,産婦人科では内科に次いで多くの種類の漢方薬が処方されているということだが,その中心は間違いなく,「女性三大処方」あるいは「婦人科三大処方」とよばれる当帰芍薬散・加味逍遙散・桂枝茯苓丸であろう.ストレート研修の時代に育った小生は医学部を卒業してすぐに研修医として産婦人科診療の現場に放り込まれたわけだが,その時に1学年上の先輩から吹き込まれた「なよなよ当帰・がっちり桂枝」は呪文のように今でも脳裏に刻み込まれている.2020年に小生がまとめ役となって,日本産科婦人科学会女性ヘルスケア委員会が日本女性医学会会員の医師を対象として行った「更年期障害の治療の実態に関するアンケート」においても,当帰芍薬散・加味逍遙散・桂枝茯苓丸を現在も処方している医師は全体の87.6%・92.2%・86.2%を占め,その割合は医師免許取得後の期間による差がなかった.つまり,三大処方は老いも若きもほとんどの産婦人科医が更年期障害を中心とする病態に対する治療の選択肢としてもっている処方なのであり,その根拠としての「虚証には当帰芍薬散・中間証には加味逍遙散・実証には桂枝茯苓丸」もよく耳にするところである.
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