Special feature 知る・学ぶ・実践する 水回りの感染制御
■Basis
水回りの病原体と感染症を学ぶ
-―薬剤感受性・耐性化の動向とその病態・治療まで
宮良 高維
1
1神戸大学医学部附属病院 感染制御部 部長/特命教授
pp.273-279
発行日 2020年10月15日
Published Date 2020/10/15
DOI https://doi.org/10.34426/ict.0000000155
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はじめに
院内の水回りなどの湿潤環境にはバイオフィルムを形成するグラム陰性桿菌が常在化しやすく,年単位にわたって病原体のリザーバー(菌保有体)となり得ることが報告されている。また,シンクや蛇口などには栄養要求性の低いPseudomonas aerginosaやその他のブドウ糖非発酵菌が常在化しやすい。そして,これらの細菌群はもともと多くの抗菌薬に自然耐性であることから,熱傷や抗腫瘍化学療法施行中の症例に環境中の常在菌による日和見感染が起こると治療が困難で,かつ同様の症例が施設内で連続して発生することにもつながる。我が国では,まだカルバペネマーゼ産生菌などの多剤耐性菌の検出頻度は,海外と比較すると少ないが,腸管内への無症候保菌症例から水回りの環境を介して院内に広がる可能性について注意を要する。
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