Special feature 知る・学ぶ・実践する 水回りの感染制御
■Review
医療施設における水回りの管理の在り方
-―水道・シンクに潜む微生物の基本と伝播の早期発見
中村 造
1
1東京医科大学病院 感染制御部・感染症科 准教授・副部長
pp.280-285
発行日 2020年10月15日
Published Date 2020/10/15
DOI https://doi.org/10.34426/ict.0000000156
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はじめに
日本の水はきれいである。これが日本人の感覚であろう。我々が口にする水に,まさか微生物が含まれていることなど想像することも少ない。たとえシンクが汚染されていても「微生物は飛んでこない」,そう思っていないだろうか。確かに消毒処理された直後の水に微生物が混入しているとは考えにくいが,消毒された水が,長いながい配管で分配され,貯留され,その後,蛇口から排出される。この水道システムには,多様なピットフォールが存在するが,現時点で,この微生物の付着・定在リスクは正確には認識されていない。そして,最も問題な点は,給水・給湯系が微生物伝播に一役を担っていることを想像しなければ,それぞれの感染症の発生にリンクを想像することができず,孤発例として捉えてしまう “リスクのunder estimation(過小評価)” が容易に起こる。まずは,このリスクを認識することが第一歩である。
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