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はじめに
手指衛生は感染対策の中で最も重要な対策であるにもかかわらず,感染対策を推進する立場で働く者にとっては,最も悩ましい対策の一つでもある。手指衛生で最も重要ことは「適切なタイミングでいかに実施できているのか」に尽きる。その基準として,『世界保健機関(WHO)手指衛生のガイドライン』1)の『手指衛生の5つのタイミング』がある。この5つのタイミングは,患者を中心にとらえ,簡易な言葉で表現されているため覚えやすいが,それがすぐに実践につながらないのが現状である。特に看護師の場合は,1回の病室への訪室で,清潔操作も行えば,汚染物の処理も行い,さらに患者環境の整備も行う。また,隣りの患者から急な依頼があれば,すぐに対応しなければならないなど,多重な看護行為の中で,適切なタイミングでの手指衛生が求められることになる。そして迷うことなく手指衛生を実施するために,擦式手指消毒剤のベッドごとの配置や個人携帯など,手指衛生をしやすい環境整備と,より具体的なタイミングを提示しながら,それを習慣化できるように教育し評価することが必要になる。
旭川赤十字病院(当院)では,2014年から各部署のリンクナースによる直接観察法による評価を導入しており,自部署の課題をリンクナース自身が実感することにより,自分たちが決めた方法でその課題解決に取り組むことができている。当院で行っている直接観察法による評価では,スタッフは評価されていることを認識しながら業務を行っている。そのような状況においても,手指衛生の遵守率は70%程度であり,通常においてはさらに低い遵守率であることは容易に想像される。2006年に感染管理室が設置されて以降今日まで,手指衛生改善促進のための方法1)をもとに,様々な方法を取り組んできた。特に擦式手指消毒剤の使用量については,スタッフが患者のもとに訪室する回数(7回以上)を想定し,全部署で1患者あたり20mL/日以上を目標としてきたが,達成できている部署は3割である。その中でも,特に部署の取り組みを強化してきている手術室と集中治療室(ICU)での取り組みを述べさせていただく。
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