Special feature 何が同じで,どこが違う? 現場向けESBL産生菌・CRE(CPE)対策
■Topic
高病原性肺炎桿菌の動向を探る
-―国内・海外の疫学・対策・治療の現状
原田 壮平
1
1藤田医科大学医学部 感染症科 准教授
pp.250-254
発行日 2019年7月15日
Published Date 2019/7/15
DOI https://doi.org/10.34426/ict.0000000063
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肺炎桿菌感染症の臨床像
肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)はエンテロバクター属菌,セラチア属菌などとともに,基礎疾患を有する入院患者や免疫不全患者に日和見感染症を起こす腸内細菌科細菌の一つとしてよく知られている。一方で,「肺炎桿菌」の名称は重篤な市中肺炎の起因菌となりうることから命名されたものである。肺炎桿菌による市中肺炎は古典的には急速進行性で膨張性の進展を示し(典型例の胸部X線検査所見として,罹患肺葉の容積拡大により葉間裂が凸状となるbulging fissure signが知られる),膿瘍形成の頻度が高いとされる。また,台湾では1990年代以降,基礎疾患を有さない(あるいは糖尿病のみを有する)患者に,肺炎桿菌による重篤な市中発症肝膿瘍(時に眼内炎・髄膜炎などの播種性病変を合併)がみられることが報告されていた1)。さらに,台湾からの単施設研究では,単一菌による壊死性筋膜炎(NF typeⅡ)の起因菌としてA群溶連菌と並んで肺炎桿菌が最多の頻度で認められている2)。このような状況は,肺炎桿菌の中に重症感染症を起こす能力が高い高病原性株が存在する可能性,そのような高病原性株の頻度に地域差がある可能性を示唆していた。
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