今月の表紙
肺炎桿菌肺炎
舘田 一博
1
1東邦大学医学部微生物・感染症学講座
pp.510-511
発行日 2015年6月1日
Published Date 2015/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543205947
- 有料閲覧
- 文献概要
◎臨床的特徴
肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)は,高齢者,新生児,術後患者,悪性腫瘍などの消耗性基礎疾患,感染防御能の低下した患者において,肺炎や尿路感染症,腹膜炎,敗血症,髄膜炎などの原因菌となる.特に本菌による肺炎は,アルコール依存症,糖尿病,慢性閉塞性肺疾患患者などに発症することが多く,典型的な症例では胸部X線において“bulging fissure”サイン(緊満性の浸潤影で周囲組織を圧迫)を示すことがある(図1).患者は粘稠性の高い喀痰(“糸を引くような”と形容される)を排出し,肺組織の破壊が強くしばしば膿胸を合併することが特徴である(図2).本菌による尿路感染症は膀胱カテーテル装着患者にみられることが多い.最近になって,台湾からK1莢膜型で高い粘稠性を示す肺炎桿菌による肝膿瘍症例が多数報告されている.その多くは糖尿病などの基礎疾患を有する宿主に発症しているが,骨髄炎や前立腺炎などの転移性病変を作ることが多く予後不良であり,注意する必要がある.
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.