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Ⅰ インフルエンザ桿菌について
インフルエンザ桿菌は1889年,1890年のインフルエンザの世界的大流行の際,病原体として発見された。後にインフルエンザの病原体がインフルエンザウイルスであることが明らかにされたため,発見の歴史をその名に残し,インフルエンザ桿菌(Haemophilus influenzae)と命名された経緯がある。
インフルエンザ桿菌は上気道に存在するグラム陰性桿菌であり,ポリサッカライド抗原をもたない無莢膜型(nontypable)と抗原をもつ莢膜型に分類される。莢膜型は莢膜多糖体の抗原性より,6つの血清型(a~f)に分類される。臨床的に重要となるのは無莢膜型と莢膜型のtype b(Hib)とされている1)。インフルエンザ桿菌の自然宿主はヒトのみであり,特に小児では60~90%で上気道粘膜に保菌していることが知られており,就学前の幼児に最も多いとされる。無莢膜型は粘膜感染症である中耳炎,副鼻腔炎,気管支炎,肺炎の起炎菌となることが知られており,小児の中耳炎,肺炎においては,肺炎球菌,モラキセラ・カタラーリスを含めて3大起炎菌といわれる2)。より臨床的に重要なものがHibであり,細菌性髄膜炎などの侵襲型インフルエンザ菌感染症の原因菌として知られる。欧米よりも罹患率は低いものの,わが国でも4か月~5歳児に発症した細菌性髄膜炎の70~72%の起炎菌がインフルエンザ桿菌であり,その大多数がHibとされている3)。わが国では,2007年にHib莢膜多糖体蛋白結合ワクチン(商品名:アクトヒブ®)が厚生労働省に承認され,2008年より発売,接種が可能になった。本稿では,このHibに対するワクチンについて解説する。
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