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はじめに
尿路感染症とは,最も一般的な在宅ケア関連感染症である。しばしばグラム陰性菌菌血症に至って,病院へ搬送されることも少なくない。その要因としては,糖尿病や悪性腫瘍による免疫障害,脳梗塞や脊髄損傷による神経障害,前立腺肥大や結石による尿路障害などがあげられるが,そもそも高齢であること自体が尿路感染をきたしやすいと言える。
起因菌の多くが大腸菌であるが,在宅ケアを受ける高齢者では複雑な背景を有していることが多いため,緑膿菌や薬剤耐性菌などの頻度が高まっている。とくに,尿道カテーテルを長期留置していると発症を繰り返すことが多く,抗菌薬の頻用とともに薬剤耐性菌が選択され,治療に難渋するようになっていく。よって,カテーテル関連尿路感染症(CAUTI)の発症を予防することは,在宅ケアにおける重要な課題となっている。
ただし,家庭や施設においてケアを提供しているのは,医療の専門家ではない家族や介護従事者であり,病院における感染管理のような厳密な対策をとることは困難である。例えば,清潔操作は可能であっても,無菌操作までを求めていくのは現実的ではない。
マスクや手袋,ガウンなど感染管理に用いる資器材が,利用者負担となることについても配慮しなければならない1)。また,在宅における尿道留置カテーテルの管理は,在宅時医学総合管理料や在宅寝たきり患者処置指導管理料に月単位で包括されており,診療所としても資器材の提供に一定の限界がある。
在宅ケアにおいては,患者それぞれの背景を確認し,ケアの提供者が理解することができ,継続的に取り組める予防方法を考えていく必要がある。以下,在宅におけるCAUTI予防の考え方について紹介するが,あくまで可能な範囲で取り組んでいくものと考えていただければ幸いである。
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