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ウェアラブル慣性センサを用いた歩行軌道計測システムと診断支援への応用
内富 寛隆
1
,
三宅 美博
1
1東京科学大学 情報理工学院
キーワード:
歩行軌道計測
,
歩行診断支援
,
パーキンソン病
,
脳卒中片麻痺
,
股関節疾患
Keyword:
歩行軌道計測
,
歩行診断支援
,
パーキンソン病
,
脳卒中片麻痺
,
股関節疾患
pp.1048-1053
発行日 2025年9月15日
Published Date 2025/9/15
DOI https://doi.org/10.32118/cr034101048
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はじめに
歩行は人間の最も基本的な運動であり,疾患の予兆が現れやすいことから,疾患の診断や経過観察への歩行軌道計測の活用が広まりつつある.たとえば,脳神経系疾患のパーキンソン病では,歩行運動に特有の症状が現れ,重要な診断基準の1つとされている.また,筋骨格系疾患の股関節疾患では,人工股関節置換術により歩行再建を実施する場合,非対称性をはじめとする歩容を診断しながら,術後の治療を計画,実行する.さらに近年では,術前術後や歩行再建プロセスの各断面において歩容を計測してデータバンク化することで,各断面での歩容の診断活用だけでなく,治療予測をする試みも始まりつつある.
このような背景において,光学式モーションキャプチャを用いる高精度な歩行計測や,カメラ映像を用いたさまざまな歩行分析アプリケーションがこれまで提案されてきた.しかしながら,これらの計測手法は計測対象の患者を撮影する複数の据置型専用カメラを,専用スペースに定常設営する必要があり,日々の診断や治療の単位時間以内に準備が間に合わない,歩行計測に多数の医療スタッフが必要となる,等の多くの残された問題があった.これらの現場ニーズの観点から,身体に簡便に装着することができる小型の慣性センサを活用して,歩行の時空間的な三次元軌道を高精度に計測可能な歩行軌道計測システムへの期待が高まりつつある.
本稿では,筆者がこれまで研究開発を進めてきたウェアラブル慣性センサを用いる歩行軌道計測システム 1)を取り上げ,その基盤技術および歩行診断支援への応用事例について解説する.

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